映画では休憩前まではトム・クルーズの映画バリに、渡辺謙さんのPVじゃないの?って思うぐらい恩地中心の物語でさほど回りのことは描かれずに進んでいく。休憩後は怒涛の畳み込みで、どんどんと周りを描いていって最後まで持っていく。つくりとしてはかなりシンプルにまとめられている。要は、どういうことが起こったのか?という深い突っ込みはほどほどに、こういうようなことがあったという、風な感じに描かれているので、詳しくは小説で…みたいな感じ。だから、映画としては非常に見やすいし、小難しいことがありすぎて訳わからないことになって混乱することなく、物足りなさも少々あるかもしれないが、ターゲット層を考えれば非常にまとまっている。これを隅から隅まで描こうとすると、ダイジェスト風な脚本になってしまい、テーマもずれていき、どうしようもないものになったと思うので、成功している映画だと思った。
また、タイミング的にも日本航空の再建問題が出てきたところなので、企業体制や政治との絡みがまったく別問題とはいえ、この映画で感じるものはある。結局同じことの繰り返しなわけで、ゲンナリしてしまう部分もあるのだが…。
ただ、良い作品に仕上がっているとはいえ、映画的にゲンナリなのは、CG処理。もう、近年まれに見る酷さです。日本航空の協力が得られないので、CGに頼ざる得ないのはわかりますが、航空会社が舞台なんだから、そこは、がんばってほしかった。やっぱり、生じゃないとだめでしょと思われてしまう。せめて、旅客機ぐらいは綺麗にしてほしいものなのに、相当酷いです。もう、非常に残念です。さらには、セットも酷い。コントですよあれじゃ。
「作り話で商業的利益を得ようとする行為は遺族への配慮が欠けている」という日本航空は法的な訴えも辞さない姿勢を見せているが、実際に遺族の方たちがどんな思いでこの映画化を感じているのかは、当然ボクにはわかりません。が、実際当事者になったわけではなく、あくまで、なんの関わりも持たない第三者の感想でしかないわけで、そういう意味では、こういう物語は、表立って伝えていくべきものだとは思う。それがどう思われようとも、やっていかなくてはならないこと、より多くの人に何かを感じてもらえることというのは、重要だと思う。難しい問題ではあるけれど、この映画に関しては見る価値があると感じた。